サンディ・サンセット

okimituki2006-02-12

 日曜の夜はとりわけ心静かになる
明日から又いつものサイクルが始まるという安心感が
不思議と心休まる気がする
 

 朝起きるのが得意なほうではなく
むしろとても苦手なのだけど
 朝起きて子どもを起して
朝食をカンタンに済ませて
それなりに学校に行く準備をさせたりして
 私もシゴトの手順を整えて、色んなことが動き出す
その時間の流れの中にいると
 たとえ部屋にひとりでいても
なんだか気持ちがほぐれてくる


 やはり何らかの動機があることは
ある種の拘束でもあるけれど
ある種の現在(いま)を支えてくれている感じもする


 何もかも自由だとむしろ、不自由になったりする
だけど しなければならないが多いとやはりつらかったりする
 毎日単調すぎても何か少しの変化が欲しくなるし
変化に富みすぎると もういい、とにかく
平穏な日々が愛しいと思うものなのかもしれない

 そんな波のように内側ではずっと揺れている


 この間から借りていた本が、今日までの貸し出し期限だったので
なんとか返さなくちゃと思って 何冊か読めていないのがあって
どれを優先的に読もうかと考えてみて村上春樹にした
 村上さんの本を読むのはとてもとても久しぶりだった


 20代の前半にはじめて読んだのがたしか
風の歌を聴け」だったような気がする
 それほど傾倒しているわけではないから
偶然のように読んでいるだけなのだけど
 それが自分の系譜に、もしかしたらバイオリズムみたいなものが
あっているのかもしれないな なんて思ったりする


 よどみなく注がれるような活字の中に
損なわれた空洞を持っている人たちが現れて
ちゃんとそこに存在しているように書かれているけど
全部幻想みたいに消えていく
 最後には砂漠だけが生きていくのだという
それは言い換えると空白だけなのかなとも思える


 今日読んだ本のなかにヒステリア・シベリアナという病名が出てきた
シベリアに住む農夫が毎日同じことをローテーションして生きている
そうやって何年も暮らしているうちに
そのシベリアの農夫の中で何かがぷつんと切れてしまう
 これまで耕していた地面に鋤(すき)を放り出して
西へ西へと飲まず喰わずで歩き出して息絶えてしまうのだそうだ


 これと似たような(似ていないかもしれないが、個人的にはなんとなく
類似するような気がする、あくまで気がする)話に
 鯨は比較的高等な哺乳類だとされているのだが
ある時 突然一匹が岸へ向かって泳ぎだして
それに追随し複数の鯨の巨体が次々に座礁するという現象がある*
何かその現象の名前もあったかもしれない そこまでは知らないんだけど


 一線というかボーダーラインというものの存在が
何か得たいの知れない反動を生むというのは
個の思惑とかでは阻止しきれないものじゃないかなと思えてくる


 円滑でシアワセで何不自由なくてというものの裏には
そういうものがひそんで渦を巻いて
手ぐすねひいて待っているような気がする
 人や個はそのそばで、絶えず翻弄されているに過ぎない


 そこに耐えていくために
ある種の大きな流れや動きは助けだし、護(まも)りになる
 そのよりどころに私はまだこの手を繋いでおきたいのだろう


 なんだか今夜はそんな浮遊感をたずさえて
愛飲している紅茶を飲みながら
大好きな板チョコをいくつか割って口の中へ溶かした

 
 昔よく聴いていたJAZZでもあれば、
もっとよかったんだけど、と半ば残念に思いながら
(でもそうなったらきっと酒も飲まないのに
酔って書けなかったかも・・ちょっと)

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*海にいる生きた生物が岸に乗り上げる現象を「ライブストランディング」というそうです
千葉県の外房海岸で06年2月の約1ヶ月あまりで4件ものイルカのストランディングが起こりました
 1986年の調査開始から99年までの14年で14件(910頭)なのに対し、00年以降は22件(510頭)に達して確実に増加している傾向だという 06/3/5