うれし 寒空 マラソン大会

okimituki2006-02-09

  今日は一時間目から息子のマラソンがあるというので
小雪がちらつく中 少しのつもりが
結局40分以上も沿道に佇むことになった


 当初、学年ごとに走るという情報を得たので
少しは見れるかもと期待を込めて待っていた
 シゴトの都合上 最も重要な時間帯をおして来ていた私は
家から最短距離の折り返し地点でじっと待機するが
 先生のお話やらトラックを一周してから走るとかで
なかなか走ってこない
 しかたなく、刺すような冷気にさらされながら 
とにかくなすすべもなく ひたすら待った


 あたりには父母とおぼしき方々もカメラやビデオを下げて
この厳冬のなか その時を今か今かと待っている
じつにご苦労なことである
 この地点は一回だけしか走らないし
おそらく集中的に人も寄り集まってくるゾーンだから
我を忘れた父母らがじりじりと詰め寄ると
そのなかから息子を見つけるのは必至だという気がしてくる


 しかし、本来は自宅勤務へ帰る予定の時間を過ぎても
一団すら走ってこないので
私は帰るに帰れない心境になってきた


 もうこうなったら腹を決めるしかないというか
もともとはちょっと見ただけでいいじゃないか 
同じ空気を感じるとかどうとか思って来たとはいっても
実際ここまで来て見れないのは 後で気持ちも燻るだろうし
なにより行って寒かっただけ というのはあまりに情けないと
だんだんと欲が出てきてしまうものでもあり
やはり思ったことをそれなりに達成して帰りたいとは願ってしまう
そう それにますますいじましくなるくらいには
体も冷え切って感覚も鈍り
とにもかくにも もうその時点では
できる限り早く走者が訪れることだけを祈るように待っていた

 
 その時、ようやくそれらしき小さい一団が
白い息を切らして走ってくる
だが、息子の姿は見つけられない
 ちょっと気を緩めたすきに走り抜けたのだろうか
じっと目を凝らしてみるが
ついにすべての走者が走り去っていってしまった
 私は落胆した・・見られなかったのかもしれない


 辺りの父母たちもしだいにまばらになっていく
それもあって、心細さと不安感に思わず身震いしそうになった
本当にこれで終わりぃ?・・・いっせいに疑問符が頭の中をかけめぐる


 そうしてしばらくうなだれていると 
あたりの話し声が徐々に耳に入ってきて
赤とか白とかいうのが聞こえてくる
それで私は思い出した


 息子が2つのグループに分けて走ると言っていたことを
だからきっと次のグループだ そうだ そうに違いない 
と勝手に思い直して
 また手の甲を擦りながら、さらに待つこと数分、その長いこと


 ようやく次の赤い帽子をかぶった一団が近づいてくる
今度は見逃せない思いで つい、にじり寄る
トップの走者が軽快に走り抜け、それに連なって次々と続く
そのなかに息子を探してみる 
けれど見つからない
・・・角を曲がりかけた瞬間
赤い帽子を目深にかぶっていて顔は判別できないが
見慣れたトレーナーを着た息子を一瞬とらえた
思わず「あ、あれだ」私は心で確信する
そして、息子の名前を小さく呼んでいた
 

 いつになく真剣そのものな表情で、こちらをちらりとも見ようともせず
息子はまっすぐに走り抜けていってしまった
 一瞬を胸に焼き付けるというけど、まさにそんな感じだった


 そこでやっと目標を無事達した私は
よしよしと家路へ向かった


 帰宅した息子にあとから聞いてみたことだが
私がいることはちゃんとわかっていたそうで
だからこそわざと無視して前を向いて走ったと生意気に言っていた


 それに順位が16位と昨年より5番も上がったのに
そのことよりも最後に1人に追い抜かれたことをしきりに悔やんでいた


 私が沿道にいたことで わずかでも息子の支えになれたのなら
それはそれで何よりなことだ
 こういう積み重ねが、日々を豊かに記憶していくことになるのだろう
 それが息子にとって、この先の長い道のりの潜在的な根っこになるのならば
と、あんなに寒くてさんざん待たされたのにやはりうれしく思えてしまった


 けれど来年のマラソン大会の沿道に立つことは
正直いまは考えたくはないというのが本音だ、というのは まちがいない!