NIGHT HEAD

okimituki2006-02-06

 雨の降る日に眠るのは心地いい
自分が無数の雨糸のシェルターに入り込むような錯覚だ
だからそこでもっと もっと と眠ってしまう


 そういう時は現実に近いけれど
少し歪んだような夢を見ることが多い


 雨音のつつむ薄暗い部屋で
そんな夢をみていると
こちらに戻ってこれなくなるような気さえする


 時に幾何学的で、時にSFチックだったり
のちによく考えればデジャヴだとか 朝方は近未来の予知夢とか


 夢のなかで現実の糸口の種をもらったことも何度かある


 とくに作歌とか創作するのは
寝入りばなのちょっと意識が不確実なタイミングに
自我を越えたインスピレーションが降りてくることがあるというので
できるだけ、そうしていた頃があった


 それは人の脳のなかにはNIGHT.HEADという覚醒していない部分があり
そこを活性化すると 自分の未知な潜在能力を発揮できるというのを
純粋に そうかも と思ったからなんだけど


               *
             
 今日の夢は、ある知っている男性の頭がそのままバニティケースみたいになっていて
私はあたりまえのようについていたファスナーを指でつまんで開き
そのぱっくり開いた頭部と顔部を額から分けた状態で
上頭部を片手で支え、顔上部から脳を覗き込み
重い鉛の塊のようなものを、いかにも大事そうにケースに収めるみたいにして入れ
しっかりとファスナーで閉じてしまうというシーンをリアリティのある映像として見
そのファスナーが閉じ終わると同時に、
ファスナーそのものの存在はあとかたもなく消え去っていて


 次の瞬間からあの鉛が脳の中でどんどんと錆びて、脳内をしだいに侵食してゆき
ただれた赤茶色の錆びや黄色い汁やら、
得体の知れないグロテスクなものたちが増殖して
 脳の機能を停止させてしまう様をなんとか止めようとして
でもどうしても止められなくて、開閉口がないからどうにもならなくて
 そこで慌てて それじゃいけない それじゃいけない なんとかしなくちゃ と
おろおろした罪悪感を抱えた感情のまま目を覚ました


 ・・・ふぅっ、と意識がもどったときは 助かったと思った
よくこういう夢を見た後は 本当に悪いことをしたわけではないのに
すべてのまとわりついていた罪悪感がほどけて ほっとする
寒い季節にお風呂にはいって浸けた足の先から
カラダの芯までじゅわぁ〜っと満ち満ちて沁みわたっていく温かさみたいな


ともかくも とりかえしのつかないことが起きる恐怖から解放されて
それで、意識がますますこちら側に吸い寄せられていって
気がつくと雨音が窓の外から、低くリズムよく耳の底に響いてきてくれて


すべてが許されたと思う
それはどこか抱擁に近い気持ちの穏やかな安堵


 そういう夢や現(うつつ)を行ったり来たり
人は毎日睡眠というカタチでしているけれど
 眠っている間に死ぬんじゃないかと
本気で思っていたのはアンデルセンだったっけ
なんとなくそういう気持ちもわからないでもないなと思う


 想像もつかない脳の内側に埋蔵してあるものに
襲われるのか、それとも救われるのか
 神秘の開閉口はどうしたら見つけられるのか
 その欠片をいつかは見つけ出したくて 私はいつも眠りのなかで彷徨っている