小学四年生のとき あなたは何をしましたか?

okimituki2006-01-31

 プラネタリウム・クリエイターの大平貴之さんが
初めて部屋の天井に蛍光塗料で星座を描き
自作のプラネタリウムを作ったのが
小学四年の時だそうです
ゴールドブレンドのラジオ版CMで
そう本人が語っているのを今日耳にしました)


 私はそのとき全校集会終わりの体育館にいました
ピンクにブラウンのふちどりのセーターの
エストに結ぶリボンのたらす二本の長さがどうしてもそろわないことに
苛立ちながら何度も何度もリボンを結びなおしていました

 それを見かねたクラスメイトのひとりが声をかけてきて
 私の手からそのリボンをそっととり、きれいに結わえ直してくれました
けれどやっぱり、依然としてその丈はそろいませんでした
 しかし彼女はきっぱりと
「そろってないほうがカワイイ」と言い切って手を放しました
どうしてもそろえなくてはと、やっきになっていた私は
・・・・呆然自失
 それが彼女との出会いでした


 そんな彼女を教室で観察していると、
冷静でありながら破天荒な姿が実におおらかでした
 彼女の習字が壁に張り出されていると、名前が左脇に縦書きではなく
下の空きマスに2行にわたっておおっぴらに書かれていたり
 美術の時間に描いた校舎の絵は、窓がまっきいろに塗られていて
 どうみてもそのシュールさは他の作品の群を抜いて輝いていました


 彼女の髪はいわゆる見事なエンジェルリングを放ったおかっぱで
いまではぜんぜん珍しくないけれど、
当時はその髪色は珍しく、もう太陽に透けるほどの金髪に近い天然茶髪でした

 彼女はそんなどこかお子様チックな外見とはうらはらに
モノにとらわれない自由な利発さを天使のように発揮し続け
私は彼女のそういうところにぐいぐい惹かれ 仲良くなりました 

            
            *


 彼女の家にはじめて行った時
縁側に続く部屋は薄暗くて入ってすぐに仏壇があり
その横にどっしりとしたステレオが壁いっぱいにならべられていました
そのひどくアナログなステレオセットに
まだ私は当時見たこともなかった33回転のレコードアルバムをセットし
針を落とし聞かせてくれたのが


パーンプキンパイとシナモンティーに バラーの形の角砂糖ふたつぅ〜
シーナモンの枝でガラスに三度 恋しい人の名を書けばぁ
恋がかなえられると 娘らは信じてぇ るぅ〜


 という曲で
彼女「コレ、ほんまかな」
私  「・・・・」
 しかしこのとき私は平静を装いながらも、内心カルチャーショックを受けていました
この曲をチョイスした小学四年の彼女の感性に


             *


 それからはお楽しみ会で発表するために
オリジナルで紙芝居「てるてるぼうず物語」を合作で作るなど
表現活動をともにし、それはさながら同人誌を作らんばかりの勢いで
肝心のお楽しみ会ではそれほどウケたかどうか定かではありませんが
(しかしのちに授業であった絵本製作のさい
私が完成版を作るというほどの熱の入れようだったことは間違いないようです)


 そしてある日の音楽の時間が終わる頃に
某深夜番組のジングルを彼女が小声で歌いました
 それに私が反応しないはずはありませんでした
 音楽室を出て教室に戻るまでに私はまた彼女と
新しい世界の扉を押すことを決めていました
 わたしたちは興味を持った深夜放送のあろうことか2部を
夜中に起きて朝まで聞いて、また1時間くらい寝てから起床して何食わぬ顔で登校し
給食を食べ、なわとびを跳んだりしていました


 その後も彼女とはピアニカとギターでセッションしたり
楽譜の読めない私のためにタブ譜を書いてもらったりもして
何度も彼女のあの仏壇とごついステレオのある部屋で夢中で練習しました
 そのわりにはあまり上達はしなかったのだけれど
そんなことはもうどうでもいいくらい
 私は彼女とそんなコアな世界にどっぷりはまりきり
同じクラスメイトたちのお遊びごとになど目もくれず
魅惑で刺激的なおたのしみの連続を過ごしたのでした


 私という私は、小学四年のときにできました
 そうです いま思うと たぶん そうなのです